2020年7月13日月曜日

【№45】密、密、密!に想うこと

  差し出された手から伝わってくる心地よい感触みつめる柔らかなまなざし、耳元届くふんわりとした言葉、肩と肩触れ合う温もり。これまで大切にしてきたことの一つひとつが、密、密、密! 私共、介護の仕事たちの普通の暮らしは、つまるところ密着、密接、密集包まれこそ成り立っていたのだということを無残にも思い知らされるコロナ禍の毎日。みな様はいかがお過ごしでしょうか。顔を背けあっての入浴のお手伝い ソッポを向きあってのお食事? アクリル板越しお話 耳元にはいつも、はダメ、密はダメ、密はダメ! の声が呪文となってさまよってるのでしょうそのに呪縛され、おののき時に自粛の視線あらがってなものへと踏み出さざるを得ない介護の現場に、しり込みしながら立ち向かっている。でも、不安に後ずさりすることもありますよね。これがコロナウイルスなるものに翻弄されている介護施設の現在。砕け散る大波も、いつかはさざ波になる。人はいつだって、災厄と折り合いをつけて、平穏を取り戻す。そうですよね。そう信じていますよ。 

2020年4月13日月曜日

【№44】なかなか採用ができない介護職員

介護職員なかなか採用できない、といわれて久しい。残念ながら、飛鳥晴山苑も例外ではない。当苑の特養には、今年3月現在で、常勤の介護職員が74名、看護師が常勤換算で882名の看護・介護職員が配属されている。入所定員152名を82名で割り算すれば1.9。入所されている方1.9人に対して1名の看護・介護職員が配置されていることになる。介護保険は、31以上の配置が必要だから、51名が最低基準。現状は30名ほど多いことになり、基準は大きくクリアしている。それでも、現場は火の車。質の高い介護現場にするためには、1.61が理想? となれば、さらに10名ほど介護職員を増やしたいところだが、逆に毎年10名ほどが退職してゆく。“離職率は特に高くない”とはいわれるものの、採用と離職の追いかけっこここ数年、お給料もなんとか他産業並みになってきていますし、仕事は楽しく、やりがいがあると自認? していますし、いやはやなんとも、今春の新卒の介護職やるせない……。 

2020年1月13日月曜日

【№43】持ち上げない介護に邁進の令和2年

元号が令和に変わっての、はじめてのお正月。おめでとうございます。 
さて、私ども特養では数年前から“持ち上げない、介護”に取り組んでいます。ベッドから車椅子へ、浴槽へ、トイレへ。毎日、何回となく、ご利用者を持ち上げる。介護職員は、ご高齢の要介護高齢者を“よっこらしょ”と、持ち上げるのがていねいな介護。当たり前の介護。そう信じて、仕事に向き合ってきましたが、その結果、当然のこととして、何人もの介護職員が腰痛持ち。やりがいのある、大好きな仕事を泣くく離れざるを得なくなる。そんな残念なことも。これはなんとかしなければ、遅ればせながら取り組みはじめたのが”ノーリフティング・ケア“。持ち上げない介護。身体使い方や持ち上げ方を研究し、使いやすく、ご利用者にも満足していただける安全な機器そろりと導入。そのささやかな成果を、11、ノーリフティング推進協会の全国大会で発表したところ、それがなんと、最優秀賞。残業もいとわず、準備してきた担当職員の苦労が一気に報われた気分。参加した職員全員期せずして大きな喚声! 喜びすぎ? いやいや、この賞を励みに、これまで以上に安心・安全・やさしい介護現場をつくってゆきますよ。そんな決意も新たに、令和2年に突入です。 

2019年10月21日月曜日

【№42】花と光に包まれた旅立ち

トミおばあは、百歳。百年も生きてきたので、体のあちこちがギシギシと痛い。寒くなるとトミおばあは ますまぐったりする。でも もうすぐ ハルヨドリがやってくる。ハルヨドリは やせていて 太陽のにおい。肩に大きなリュック。澄んだ瞳。ハルヨドリが どこまでもとべるのは このリュックの中に ハルヨの花の種が ぎっしり つまっているからだ。ハルヨドリは年二回、遠い国から トミおばあのいる 小さな島へ とんでくる。トミおばあは ハルヨドリをまっている。何日も 何日も 何日も──。そして ついに オリーブ色の風といっしょに 空からハルヨドリがはいってきた。トミおばあの部屋の中に ハルヨドリのリュックの中の ハルヨの種が ザザア─とこぼれた。次のしゅんかん 種が いっせいに芽を出し 見るまに スクスクのびて つぼみがふくらみ トミおばあの部屋いっぱいに 春の色の オレンジとピンクの花がさいた。ハルヨドリが つばさを広げてトミおばあに だきつく。“あいたかったよ トミおばあ” “おかえり ずっと まっていたよ”」山田たまん著『光に包まれて』より抜粋・再録 ※ハルヨドリはタイで28年間、ハンセン病の支援活動にかかわり続けている看護師・阿部春代さん。トミおばあは18歳から84年間、宮古島のハンセン病療養所で療養生活を続けこの物語の2年後の2018年の夏、いつも待っていたハルヨドリの翼にのって旅立った享年102歳。