2014年10月8日水曜日

【№19】最後の時に傍らにたたずむもの

介護や看護の職員は、毎日、ご入所者のバイタルサインをチェックいたします。ご高齢の方の心臓の拍動に耳をすまし、血液の流れの微小な変化を読み取る行為は、体調の変化を感じ取るサインであるにとどまらず、言葉を発することの少なくなった方々からの、魂のメッセージ、沈黙の語りかけだと感じることがあります。看取りを行なっている特養の宿命でしょう、今年の夏も、たくさんの方が召されてゆきました。そのお一人おひとりにとって、人生の旅路はどのようなものであったのでしょう。楽しかったのでしょうか、苦しい道のりだったのでしょうか。いずれであったにしても、私たちのなすべき仕事は、その最後の時に傍らにたたずむものとして、静謐(せいひつ)の中で永遠の時を迎えていただきたいという願いです。そして静謐の背後に通奏低音として流れる魂の拍動が語りかけるサインの一つひとつを、耳を澄まして聞き分けたいと思うのです。