2018年1月16日火曜日

【№36】「ありがとう」という言葉に包まれて

面接にきてくれた若い求職者に「特養って、どんなところですか?」と聞かれて、「いつも、ありがとうっていう言葉が、行き交っているところですよ」と応えています。長い人生を歩んでこられて、いつしかお年を召されて、自分のことが上手に出来なくなって、途方にくれて、そんな時、自分の孫のような若者がそっと、手を差し伸べてくれる。そして、思わず“ありがとう”って言葉が出て、傍らで孫のような若者がにっこり。お年寄りの心の中には、長い人生の年月の分だけ、たくさんの“ありがとう”が秘められています。そんな、“ありがとう”と出会える場所、特養の一日は、そんな毎日。ぜひ、一緒に働きましょう。

2017年10月12日木曜日

【№35】お見送りの時の静寂

105歳の最後の時まで、病む人々の傍らに立ち続け、生涯を通して導きの光となってこられた日野原重明先生が、7月18日、天に召された。私ども、飛鳥晴山苑にあっては、開設以来、折々にお訪ねいただいてご指導を受け、入所されている方々にそのやさしいまなざしを注いでいただいた。私個人としても、50幾年も前のことになるが、病に倒れた私の義父を看取っていただいたこと、聖路加国際病院を訪ねた際、チャペルでかけられたお言葉の数々を思い出し、その日、それらの一齣、ひとこまが心に低く、響き流れた。
当苑では一年の間に50名ほどの方が旅立たれるが、その方々をお見送りする秋の彼岸供養会が9月の25日に催された。毎日、朝な夕なに、心の奥深くに分け入って喜びや哀しみ、共感や孤独をお受けしてきた職員一人ひとりがしめやかに手を合わせる。ご住職の読経が通奏低音となってあたりを包み込む。お一人ひとりの死に向き合う静寂の時。
謹んでご冥福をお祈りいたします。

2017年7月12日水曜日

【№34】推薦90名のうち、入所者は約半数

北区の特養ではベッドに空きが出ますと、区の担当課から推薦を受け、希望者との面談等、双方で入所の検討が始まります。飛鳥晴山苑では昨年度1年間で90名の方の推薦を受け入所調整をいたしましたが、最終的に入所された方は47名でした。ひとつのベッドに空きが出て、次の方が入所されるまで通常、4週間。長くベッドが空いたままということにならないよう、スピーディーに入所していただくこと。それが、入所を心待ちにしておられる希望者の要望にお応えする当然の道筋と考えています。一方、入所されなかった43名の方の内訳を見ますと、「辞退された方」が30名、「入院中のために保留」とする方が6名、「すでに亡くなっていた方」が4名、「医療行為等の必要性により受け入れが困難」とさせていただいた方が3名でした。「辞退」につきましては「家族間の意思の不一致」「まだまだ元気」「金銭的な負担」など、そのご事情について、私どもとしてはいかんともしがたいものがございますが、重介護が入所条件である特養であれば、当然ながら「医療行為」の必要性はますます高いはずですから、そのことをもって「困難」という判断は可能な限り遠ざけたいところです。その体制作りを急がなければなりませんね。

2017年1月20日金曜日

【№33】ご高齢者の生き抜く力に感服の毎日

特養に入所してこられる方は、基本的に要介護度が3以上に制限されていますから、必然的に飛鳥晴山苑で暮らしている方も平均要介護度4.2という重い方が中心となります。それでも、お一人おひとりにフォーカスしてお世話をしていますと、2ヶ月前にはできなかったことが今日できる、といった新しい発見にうれしくなることがたくさんあります。辛抱強い歩行訓練の結果、車椅子の方がご自身の足で散歩を楽しまれるようになる、オムツの方が普通の下着を身に着けてしゃきっとお暮らしになっている。そんな場面に遭遇することはまれではありません。私どもの施設の統計では、入所されて何年かの間に残念ながら重くなる方は30%ほどいらっしゃいますが、逆に介護度が軽くなる方は20%ほど、現状維持の方が50%ほどいらっしゃいます。“加齢に抗して70%の方が現状維持以上”ということは、平均年齢88歳という特養にあって、これはすごいことではないでしょうか。介護度が軽くなることが、イコール元気になることではありませんが、平成28年もまた、自立への歩みを止めていないご高齢者の生き抜く力に感服の毎日でした。

2016年10月6日木曜日

【№32】感謝、感謝の地域密着、万々歳

私ども、特養・飛鳥晴山苑に入所されている方は、原則北区に住民票がある方ばかりだし、その方々をお世話することでいただける介護報酬も北区の40歳以上の方が毎月負担している介護保険料が基本財源。そのお世話をしている職員も北区在住者が多数派です。健康管理や治療のために定期的に往診してくれるお医者様はすべてが北区で開業している先生たち。入院も特に支障がなければ北区内の協力病院に。特別養護老人ホームは典型的な地域密着型産業なのですね。北区で暮らし、北区で子育てをし、北区で老い、北区で介護のお世話になる。住み慣れた地域で、なじみの人々に囲まれて最後の時を迎える。飛鳥晴山苑がそんなお年寄りたちの穏やかな最後のステージとなりますように。これが私ども職員の大切なお役目と肝に銘じて精進してまいります。それにしても、先日(8月20日)行われた納涼祭。あいにくの嵐をものともせず、お年寄り、障害のある方、ご家族、近くの子供たち、区役所や区議会関係の方々がわんさか集まって、これぞ地域密着。地域に支えられていることを改めて実感させていただいた一日でした。大感謝です。

2016年7月6日水曜日

【№31】再び、虐待の芽について

このコラムで以前にも触れたことがありますが、当苑では職員によるご入居者・ご利用者への虐待について、当然のことながら、繊細に対応してまいりました。幸いにして、これまでのところ、ご家族やご本人の心身に大きなストレスとなるようなケースはありませんでしたが、介護する側には気づかない、小さな兆しはたくさんあると感じています。それを称して「虐待の芽」と意識化し、定期的にチェックをしてもらっています。例えば、「利用者に友達感覚で接したり、子ども扱いしたりしていませんか」という設問に対して───平成26年12月と平成28年3月の調査を比較しますと、「していると」答えた職員が28.1%⇒1.1%に減少。逆に「していない」が51.7%⇒82.2%と増加し、他の職員がしているのを「見たこと、聴いたことがある」は20.2%⇒9.0%となっています。その他、「威圧的態度」「ちょっと待っての乱用」「訴えへの否定的態度」等、15項目にわたっての設問を半年ごとに繰り返した結果、すべての項目でしだいに数値が改善されています。虐待はあってはならないことですし、その「芽」は早期に摘み取らなければなりません。そのためにも定期的なこのチェックは大変有効と感じています。

2016年4月15日金曜日

【№30】ユニットケアはタコツボケア?

特養飛鳥晴山苑は1ユニット10人の要介護高齢者を、概ね4.8人の介護職員がお世話をしている。10人×24時間×7日=1680時間のお世話を、4.8人×1週の労働時間40時間=192時間の持ち時間で行っているという計算になる。別の言い方をすれば、ご高齢者の1時間が介護労働者にとっては8.75時間の重みがあるということもできる。この重い責任がそれぞれのユニットの中に、充満している。ユニット型特養のすばらしさは、一人ひとりのプライバシーに配慮した個別ケアが可能なこと。確かにすばらしい。しかし、「重みが充満した」現実のユニットの日常は、私には「個別よりも孤立」が勝っているように感じるし、「連携よりも不連続」に偏っているように見える。過剰な重みの前に、ユニット同士互いに連携し合うことをやめ、サイロのように、タコツボのように身を固く閉ざしているよう。ユニット型は孤立したタコツボの集積体? その中に沈み込む介護職員の孤立感は深い。私の杞憂であろうか。

2016年1月13日水曜日

【№29】自立と依存と

飛鳥晴山苑では自立支援に力をそそいでいる。車いすの方が少しでも歩けるように、おむつを使わず、トイレで排せつできるようになっていただく。そんな自立支援を強化。3年がたち、おむつ使用の方が当初の95%から30数パーセントにまで減少している。入所時、車いすであった方が半年の歩行訓練でトイレまで歩く、廊下をおしゃべりしながら歩いている。そんな光景が目に飛び込んでくるようになった。平均年齢88歳、平均要介護度4.2の方々が、ご自身の尊厳を保持し、努力をしていただいているお姿には頭が下がる思いがする。
辞書には「自立とは依存、受け身から脱して自分の足で立つこと」とあり、当苑の「自立支援」も、可能な限りこのイメージに近づくための試みと考えている。他方、幼児期に脳性まひの後遺障害を負った熊谷晋一郎さんという方がいる。重い障害を抱えながら、のちに医師となった氏によれば、「障害は他者に依存できないことにより発生する。依存先が少ないことが障害である。自立=成長とはどんどん依存先が増えてゆくこと」という。表現は180度違っていても、互いに遠く先に見据えているのは、いかにして人としての尊厳を守るかということになるだろうか。

2015年10月26日月曜日

【№28】忍び寄る?虐待の芽

福祉職員によるご利用者への”虐待”が、大きな社会問題となっている。私ども飛鳥晴山苑では幸いそのような事例は顔を出してはいないが、目を凝らせば「虐待の芽」はそこかしこに感じ取れることも事実である。実のところ、他人ごとではない、のである。そのことにしっかりと向き合うために、私どもでは特養介護職全員(90名ほど)を対象にして、一人ひとりに4か月ごとに、15問からなる『虐待の芽チェックリスト』をつけてもらっている。昨年(26年)12月の調査では、例えば「ご利用者に友達感覚で接したり、子ども扱いをしていませんか」という設問に、28%の職員が「している」というマイナスの回答であった。が、翌年(27年)3月の調査ではマイナス回答は12.3%、さらに直近(この9月)の調査では5.7%に大きく減少。「ちょっと待ってを乱用し、長時間待たせていませんか」という設問については26年12月には「している」との回答が25%であったが、27年9月には13.6%に減少。また、「ご利用者の訴えに否定的な態度をとる」「人格を無視した関わりをすることがある」との設問へのマイナスの回答はゼロであった。管理者としてはいい方向に向かっているのかなと幾分安心の結果だが、報道等を見聞きするにつけ、地下深くに眠っているかもしれない”芽”が顔を出さないよう、これからも細心の注意を払ってゆかねばとの思いを新たにしている。

2015年10月7日水曜日

【№27】敬老の日に想うこと……

今年も、敬老の日をはさんで、特養の各ユニットでも、デイサービスのフロアでも、毎日のように、お祝いの会が開かれています。白寿を迎えた方の笑顔、卒寿の方の即妙なあいさつ、喜寿の方のていねいなお言葉……。賀寿者の方は特養で33名、デイサービスでは23名。お祝いの会を楽しまれているお姿に、この1年がなんとか平安であったことを実感いたします。この季節、耳を澄ましますと、どこか遠くから、懐かしいお囃子が流れてきます。近くの街で、秋祭りが行われているのでしょうか。はるか昔、どなたも幼かった頃、こども神輿が辻つじを巡り、おうちの玄関先で獅子が舞い、笛の音が心躍らせます。お茶の間からは、そのお家のお年寄りの元気な手拍子が聞こえてきます。お年寄りを囲むように、家族のさんざめき。そんな光景が、目に浮かびます。お集まりいただいた、賀寿者の方々のお心の中にも、そんな思い出に満たされているのでしょうか。元気だった頃、にぎやかだった頃を思い出していただき、これからの毎日を存分に楽しんでいただきたい、と願っています。

2015年8月19日水曜日

【№26】かたわらに、付き添うということ

作者のわからない歌や詩が、いつの間にか広く知られてゆくことがある。ポルトガルの方が書いたというこの『手紙~親愛なる子供たちへ~』も、そのひとつだろうか。すでにご存知の方も多いのかもしれないが、少し抜粋してみたい。
───年老いた私が ある日 今までの私と違っていたとしても どうかそのままの私のことを理解してほしい。~同じ話を何度も何度も繰り返しても その結末をどうかさえぎらないで欲しい あなたにせがまれて繰り返し読んだ絵本のあたたかな結末は いつも同じでも私の心を平和にしてくれた ~悲しいことではないんだ 旅立ちの前の準備をしている私に祝福の祈りを捧げて欲しい ~あなたの人生の始まりに私がしっかりと付き添ったように 私の人生の終わりに少しだけ付き添ってほしい あなたが生まれてくれたことで私が受けた多くの喜びと あなたに対する変わらぬ愛を持って笑顔で答えたい 私の子供たちへ 愛する子供たちへ ───(日本語訳詞:角 智織)

2015年7月8日水曜日

【№25】お手伝いします。高齢者のお買い物

今に始まったことではないが、スーパーマーケットで買い物をすませ、心もとない足取りで自宅へと向かう高齢の方を見かけることが多い。日常の買い物は、お米はもちろん、野菜、果物、味噌、醤油……、そのどれもがずっしりと重い。車はもとより、自転車を使うことも難しい高齢の方にとって、生活必需品の買い物は苦役にも似た大仕事。私と女房のそう遠くない将来を想像しても、暗い気持ちになる。
この“大仕事“、地域で高齢者の福祉事業を行っている私どもが、少しなりともお手伝いできないか? 幸い、私どもが行っているデイサービスの送迎車は朝夕動かすだけで、日中の時間帯はたいてい駐車場で眠っている。この車と担当の運転職員に動いてもらって、買い物の足にお困りの御高齢者をお店まで送迎する。口はばったい物言いで恐縮だが、昨今、盛んに議論されている社会福祉法人による地域貢献事業の、ささやかだが、これも、その一つ。ならば料金はもちろん無料とさせていただこう。ここまで、思いを巡らせて、さて、ここからは地元自治会など地域の方のご意見を拝聴しながら、もう少し内容を整理し、今年の秋までには、スタートの運びとしたい。乞う!ご期待。喜んでくださる方が多いことを願いつつ。

2015年6月19日金曜日

【№24】近い将来、東京圏介護破綻?

”東京圏介護破綻“という刺激的な言葉が、メディア上で踊っている。発信元は日本創成会議(座長・増田寛也)が中央公論7月号に発表した「東京圏高齢化危機回避戦略」。  提言によれば、───これまで若者中心のエリアであった東京圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)の後期高齢者数は、2015年の397万人から2025年には572万人へと175万人も増加する。同圏での高齢者の急増は入院需要を増加させ(10年間で20%増)、当然ながら介護需要に至っては50%も増加する。が、しかし地価の高い東京圏では病院・介護施設の大幅増は望めない。増設しようにも、介護・看護職員は絶対的に不足している。その解決のキーワードは、広域化───。
東京圏の高齢者を地方で受け入れる、地方に有意の仕事が増える、人手が絶対的に不足している東京圏にも、働き手を積極的に受け入れる工夫を、とするこの提言には「地方に押し付けるな!」「3Kの職場のままでは!」など難題も多い。が、すでに杉並区では伊豆に特養をつくるという計画が進んでいるそうだし、23区から1時間~2時間圏内で、温暖、明媚な千葉の房総や印旛あたりも東京圏で暮らす高齢者にとって魅力的な終の棲家となりそう。介護保険の基本コンセプトの一つは広域的サービス。医療保険と同様、全国どこにいても、定額・定質のサービスが受けられる素晴らしい制度。のびやかな(広域的な)、こだわりのない心で、将来の難題に備えたい。